死別によるさまざまな反応は自然な症状です

ある日、突然、大切な人に自ら命を断たれてしまった時、多くの遺族の方々は、激しい心身の嵐に襲われます。
まるで別人かのように変わり果てしまう自分。夜は眠れず、感情は乱れる ばかり。
食欲もなく体重は減る一方で、そして「なぜどうして」と叫べども答えは返ってこない----。
あの日、あの時のことが脳裏をかすめ、もしかすると自分のあの言動が そのきっかけをつくったのではないか、またどうして早く変調に気づかなかったのか・・・、と自分を責立て罪責感に苦しめられることもあります。

泣いたり、怒ったり、さらには大事な人の跡を追いたくなったり、と感情のコントロールが難しくなります。
しかし、そのような反応は、あの突然の死別に遭遇したことによる、当然であり自然な反応です。
むしろ、そのような反応が出ない方がおかしい、とも言えましょう。
むろん、個人差はありますが。
そして、そのつらく、悲しい感情との折り合いは、いずれその人なりに落ち着いてきます。


真っ暗なトンネルの先に、出口は見えてきます

毎日、生きていくだけが大仕事のような日々。
この真っ暗なトンネルはどこまで続き、はたして出口はあるのだろうか、と不安に怯えることもあります。
この暗く、つらい日々と、できれば少しずつ逃げずに向き合っていくことが大切です。
そのような姿勢を大事にしていくことで、トンネルの先が見えてきます。
その時期は、それぞれの遺族によって個人差はありますが・・・。
しかし、たった1人でこのような作業を行うのは難しいことでしょう。
同じ体験者の方々と、悲しみや苦しみをともに分かち合っていくことが、トンネルの出口に向かって行く際の杖となり、力となりましょう。
また心身の不調が著しく続き、日常生活に大きな支障が出る場合には、専門機関や専門職の力を借りることも大切です。
このような暗い渦中での向き合いを通じて、今は亡き大事な人との、心の架け橋が生まれてくることもあります。
そして、亡き人からのバトンを受け、ともに新しい世界の物語を紡いでいく日が訪れてくることでしょう。




主な出版物

グリーフケア・サポートプラザ 編 監修 平山正実  朝日新聞社刊
『自ら逝ったあなた、遺された私 家族の自死と向き合う』

本書裏面(内容紹介)より

不況を背景に、近年増加する「自死」。
「なぜ?」「どうして?」。遺された家族は、答えの永遠に出ない疑問にからめとられ、悲嘆のどん底に突き落とされる。

「自死は弱い人間のするもの」「恥ずべきこと」という社会の偏見や、「あの時きちんと話を聞いていれば」という自身の罪責感、そして「元気を出して」「早く忘れなさい」といった人々の何気ないひとことが、さらに彼らを追い詰めていく。

「自死」であるがために、遺族は口をつぐみ、社会に背を向けてしまいがちだ。
絶望の末に、あとを追おうとする人も少なくない。

しかし、彼らには生きる権利がある。
引き裂かれんばかりの心の行き場はどこにあるのか?
周囲の人間はどう支えればよいか?

遺族が人生を取り戻すために、遺族自身と彼らを支える人々に知ってほしいことがある!

*本書は自死遺族に対するグリーフケアのあり方や、遺族自身の声なども多く収められています。
*巻末には全国の自死遺族のサポート団体(自助グループ含)が掲載されています。